〜第二幕〜



舞台:繁華街から少し外れた裏通りのラーメン屋台
時刻:丑三つ時

四人の麺をすする音が流れる。
「これ、馬の背油が入ってないね。」
黒沢が箸を止める。
「あ〜んっ」
酒井が下から上に視線を移しながら黒沢を睨む。
「男のくせに細かいこと言う奴はもてねぇぞ」
酒井の言葉に黒沢は黙って落ち込む。
「男のくせにって、女ってな〜んであんなに言うんですかね」
暗い口調で安岡が言う。
「そのくせ、女のくせにって言ったら怒るよなぁ」
村上の言葉にみんなが頷く。
「君の彼女ってホステスなの?」
北山が安岡に尋ねる。
「学生の時から同棲してるんだけどね。俺が就職失敗しちゃって、仕事が決まるまでの間ってことでホステスになったんだけど、それが、な〜んかはまっちゃったみたいで…」
「一度お水に足を入れるとなかなか抜け出せないからね」
黒沢が言う。
「じゃぁ今、ホステスのヒモなんだ」
村上がバカにしたような口調で言う。
「ヒモじゃないですよ」
安岡が吐き捨てる様に言う。
「彼女に経済的に依存しているならヒモで良いんじゃないの?」
北山が言う。
「確かにそうだよな。」
酒井も頷く。
「ということで、安岡君のあだ名はヒモ男に決定。じゃあ、聞いてください、“ヒモ男のテーマ”、♪悲しきヒモ男〜」
村上がギターを持って歌い出そうとする。
「うるせぇー、俺だってヒモなんかやりたかねぇーよ」
安岡が村上のギターを取り上げる。
「あっ、今、ヒモって自分で認めた」
酒井がうれしそうに安岡を指差しながら言う。
「只今一曲525円で常時受付中です。今ならもれなく…」
営業口調で村上が言う。
「黙ってろ!俺はヒモじゃない!あいつと俺はそんな関係じゃないんだぁ」
安岡がほえる。
「じゃぁ、どんな関係なの?」
北山が尋ねる。思いがけないこの質問に安岡の体はフリーズする。照明が落ち、安岡一人にスポットライトが当たる。
「あいつと俺は、あいつと俺の恋は、あいつとの出会いは、運命なんだ!」
“I LOVE YOU,BABY”が流れる。
「運命ね〜。でも、俺は会う女、全部に運命感じるけどなぁ。ま、今んとこ間違ってばかりいるけど…」
村上が言う。
“まちがいさがし”が流れる。


- 2 -

←PREV | INDEX | NEXT→