5〜6



優「ごちそうさま。お父様は、お料理上手なんですね。」
雄「そうなのよ。また今度いらっしゃい。あの人にお料理教えてもらうといいわよ。」
優「はい。ということは、お母様は、そこに惚れたんですね。」
雄「ん?そうねえ。」
と、静かに微笑んで、薫を見つめた。

陽一は薫と、食事の後片付けをしていた。
薫「なかなかかわいくて、頭の良さそうなお嬢さんじゃないか。」
陽「おやじもタイプだろ?」
薫「あぁ、そうだな。でも、母さんには負けるだろ。」
陽「ふ〜ん。」
薫「なんだ、その目は?」
陽「いや、べつに」
と言いながらも、陽一の目は、笑いをこらえていなかった。

家族は幸せをかみしめていた。

て「おお〜い(ドンドン)。ここから、出してくれー!
  年寄りを大事にしないと、罰があたるぞー!飯を食わせてくれーーー!
  俺が恋愛のイロハを教えてやるぞー!」
ひとり、押入で叫んでいるてつ爺を残して。

薫「父さん、何をいつまですねてるんだよ。」
て「お前に俺の気持ちがわかってたまるか!」
と、つばを頬につけながら、しゃくりあげて言った。
薫「優子さんに手を出しそうだったから。」
て「そんなの決まってるじゃねえか。
  目の前にごちそうが転がってるのに、手を出さんバカ者がいるか!」
薫「ほら・・・・。そんなこったろうと思ったよ。やっぱり、押入に入れといて正解だったよ。」

そこへ、優子を送りに行った陽一が帰ってきた。
陽「じいちゃんによろしくって。」
て「お?ほんとか?やっぱり、じいちゃんに会いたがってたんじゃねえか。ほれ見ろ。」
と、てつ爺は得意満面だった。
薫「陽一、気を使わなくていいんだぞ。」
と、父に言われたものの、陽一は気にしてなかった。
優子はある特技を持っていて、どんな人でもかなわないのを、陽一は知っていた。
それが、たとえてつ爺だとしても。


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