9〜10
薫と雄子は、しばらくぶりに夫婦水入らずで、晩酌をしていた。 雄「お父さんって、女の子好きだけど、私には一回も手をだしたことが無かったわね。」 薫「当たり前だろう。俺が、うまいこと言ってきたんだから。雄子は、空手5段だって言ってあるんだ。」 雄「いつ、私が空手やってたの?でも、お父さんって、妙にかわいいところあるわよね。」 薫「おまえ、趣味が変なんじゃないのか?」 雄「だったら、あなたが変ってこと?」 薫「いやいや、俺はまともだよ。」 雄「でも、お父さんって、女としては妙にそそられるタイプなのよね。優子ちゃんもそうじゃないかな。」 薫「だから、わざわざ『おじいちゃんに会いに来た』って笑顔で言うのかな。」 雄「そうかもね。あなたの家系が、女の子のほうから好かれるのよ。まあ、男からも好きって言われたら、嫌だけどね。」 てつ爺と優子は、二人で飲んでいた。 優「おじいちゃん、どうしたの?よっぱらっちゃた?外に出ようか?」 て「そうかもな。しばらくぶりで、飲んだからな。」 と、二人は外に出た。 優子は、黒沢家まで、てつ爺を送っていくことにした。 ある程度歩いた暗がりで、てつ爺は、優子に抱き着いた。 て(へっへっへっへっ。迷える仔羊ちゃん。俺が教えてやるぜ。) その途端、てつ爺の体が、ふっと浮きあがった。 気が付くと、てつ爺は、鼻から血をだして、道路に仰向けに倒れていた。 て「かわいい顔して、そんなことを・・・」 と言って、てつ爺は意識を失った。優子は声をかけた。 優「もう、おじいちゃんったらぁ。大丈夫?」 そこへ、陽一が走ってきた。心配だった、てつ爺が。 陽「大丈夫か?」 と、陽一は優子を見た。そして、てつ爺を見つけて、 陽「また、やったか・・・」 優「えへ、やっちゃった。だって、おじいちゃん、元気だったんだもの」 陽「護身術はいいよ。お前も女の子なんだから。危ない目にあった時のために、必要だと思うよ。でもな、よく考えてみろよ。この鼻血は異常だろ?仰向けに倒れて、こんなに鼻血出ないだろ」 陽一は鼻から下を真っ赤に染めてるてつ爺を、おぶって帰った。 横で、優子は「ごめんね、おじいちゃん」と、言った。 優子は柔道をやると同時に、右手の人差し指と中指2本を異常に鍛えていた。 それは、てつ爺を見ればわかるが、鼻の穴が妙におっぴろげ状態だった。 そう、優子は鼻の穴に指を突っ込み、そのまま指二本で、背負い投げをする名人だった。 じつは、陽一も危うくされそうになったことがあったのだ。 陽一は、知る人ぞ知るキス魔だったため、おやすみのキスをしようとした時、指を入れられそうになったことがあった。それ以来、陽一は下手に手を出していなかった。いつも、キスは優子からであった。 |